民泊の種類別比較
【民泊の種類別比較】
今回は民泊を種類別に比較してご説明したいと思います。
広い意味での民泊とは、住宅(戸建住宅、マンションなど)の一部又は全部を活用して提供される宿泊サービスです。
一戸建ての自宅空き部屋や投資用に購入したワンルームマンションに他人を泊めたりすることはもちろん、友達や親せきを自宅に泊めるのも民泊にあたります。
この民泊を反復・継続して有償で行う場合は、法律上の規制があります。
これが現在一般的に言われている狭い意味での民泊にあたります。
(以後、民泊との記載はすべてこの狭い意味での民泊です)
民泊を行うには、2016年1月の特区民泊の開始までは旅館業法の許可が原則必要でした。
そして本年2018年6月15日施行の住宅宿泊事業法により新たな合法民泊制度が誕生し、日本における合法民泊はほとんどこの3つの類型、すなわち『(1)旅館業法による民泊』、『(2)特区民泊』、『(3)住宅宿泊事業法による民泊』に該当すると思われます。
ですので、今回はこの3つの類型に絞って比較検討したいと思います。
以下の表の『特区民泊』は「国家戦略特別区域法に基づく外国人滞在施設経営事業」、『新法民泊』は「住宅宿泊事業法による民泊」のことです。
特区民泊は大阪市の場合を記載しました。
比較項目はもっとたくさんありますが、違いがある点や重要と思われる点を抜粋して記載しました。
細かく記載すると見にくくなるので原則を中心に記載しましたし、メリット・デメリットに関してはあくまで主観ですので参考程度でお願いします。
≪民泊比較表≫
3つの方式の特徴をかなり大雑把に評価すると、(1)は許可要件はかなり厳しいが、事業開始後は制約が少なくビジネスに最も適している。
(3)は旅館業法による厳しい許可要件が不要なので民泊事業を合法的に始め易くなったが、事業開始後は稼働日数制限があり、ビジネスにはあまり適していない。
(2)は旅館業法の制約を受けないのは(3)と同じで、両者のいいとこ取りのイメージ。
まず(1)の旅館業法による『旅館・ホテル営業』又は『簡易宿所営業』について検討します。
両者はともに旅館業法が根拠法令になっており、許可を取得するには厳しい構造設備の要件や用途地域の制限が課せられますが、許可取得後は宿泊日数制限(特区民泊は2泊3日以上(大阪市))や稼働日数制限(新法民泊は年間180日以内)を受けないので、最もビジネスに適しております。
『旅館・ホテル営業』『簡易宿所営業』の両者の大きな違いは、想定される貸し方(別表E)です。
『旅館・ホテル営業』では1室を1グループだけに貸すことを想定しています。高級ホテルやビジネスホテル等ごく一般的なホテルや旅館はこれです。
それに対して『簡易宿所営業』は1室を多グループに貸すことを想定しています。相部屋形式というか、ユースホステル形式というか、山小屋形式というか、例えばカプセルホテルはこの簡易宿所営業です。ファーストキャビンなるカプセルホテルもこの方式です。
西成のごく安いタコ部屋形式のホテルもこの方式だと思われます。
この想定される貸し方の違いが、構造設備などの要件に現れています。1室の最低床面積であったり、便所の個数であったりです。
両者の違いは従来はかなり大きいものがありましたが、規制緩和によりその違いは小さくなってきました。
緩和前は旅館・ホテル営業では最低客室数が旅館5室、ホテル10室でしたので、そもそも共同住宅の1室での旅館・ホテル営業は不可能でしたが、2018年1月の改正により緩和され共同住宅の1室でも旅館・ホテル営業での開業が可能にはなりました。
次にひとつ飛ばして(3)の新法民泊について検討します。
旅館業法での民泊は許可要件が厳しいので開業のハードルは高いです。特区民泊は当然、特区でしか開業できません。このような状況の中で国が作り出したのが、開業のハードルを下げ、全国どこでも開業できるこの新法民泊です。
ただ、新法民泊を無制限に認めることは既存の宿泊事業者にとって死活問題ですので、年間の稼働日数が180日以内に制限されました(条例で更に厳しい制限が課せられている場合有り)。
最後に(2)特区民泊による認定を検討します。
まず特区民泊による認定を受けるには当然ながら国家戦略特別区域内である必要がありますので、特区内での開業かどうかを調べる必要があります。
次の場所的要件としては用途地域の制限があります。例えば大阪市では住居専用地域では営業できません。
ひとつデメリットであると思われるのが、別表Cの宿泊日数制限です。特区民泊では宿泊者に2泊3日以上(大阪市の場合)滞在してもらう必要があります。制度開始直後は6泊7日以上でした。これは既存のホテルや旅館を守るためでしたが、要件緩和により現実的な日数制限になりました。
どの方式を選択しても、保健所・建築指導課・消防署に事前相談を行い、許可等を妨げる重要な論点がないかを確認する必要があります。更に建築士の意見も聞きながら最終的にどの方式で許可等を取得するのかを決定します。
民泊事業をお考えの方でどの方式で開業するのか悩まれているなら、私の個人的見解としては、特区内であればまず特区民泊を検討すべきだと考えます。
なぜなら特区民泊は特別区域だけに特別に認められた優遇措置だからです。
それから事業としての本気度を基準として、旅館業法による民泊にするのか新法民泊にするのかを判断するのがベストだと考えます。
最近は新法民泊で届出を行い、営業できる180日間以外は旅館業法による規制を受けない1ヵ月以上の賃貸借契約(マンスリーマンションなど)で貸し出すビジネスモデルが登場しています。
関連ページ
- 保護対象施設の調査は骨が折れます
- 保護対象施設の調査の記録です。
- 分割(合併)は慎重に!
- パチンコホールの分割・合併についてのブログ記事
- 島に全台ベニヤで、島撤去!?
- 見通しを妨げる設備についてのブログ記事
- マル優は本当にお得なの?
- マル優取得のメリット・デメリットについてのブログ記事
- 御上(おかみ)には逆らえませんね
- 風適法運用についてのブログ記事
- 賞品は充分取り揃えて下さいね
- 賞品の取り揃えは重要事項です
- これからは人手不足が経営リスク
- 今後労働人口の減少により、人手不足が深刻になります。パチンコホールにとっても経営リスクになります。
- 今更ですがパチンコ店は4号営業です
- 平成28年に風適法が改正され、パチンコ店は7号営業から4号営業に変わりました。
- 不便なホールがあります
- 営業マン時代に気付いた不便なホールの話
- 相続登記は面倒になる前に!
- 相続登記はいつまでが期限なのかについてのブログ記事
- 相続放棄は厳密です
- 相続放棄には期間などの要件があり、家庭裁判所への申述が必要です。
- パチンコ店長が関与したとされるサクラ問題を考える
- ある関西地元パチンコ店の店長がサクラを持ち掛けたとされる問題を説明
- 相続はよく''争族''などと言われています
- 相続において親族間での争いが増えております。
- それは無承認変更です。
- 使用していない賞品(景品)カウンターを閉鎖している場合は、無承認変更にあたるかもしれません。
- 保護対象施設の調査は骨が折れますA
- 開店予定地の近隣に保護対象施設があると、風俗営業の許可は下りません。実体験を元にした解説です。
- 共有名義の不動産について
- 例えば、夫婦などで共有名義の不動産については注意が必要です。
- 研修の講師してきました(曽根崎遊技業組合様にて)
- 当事務所ではセミナーや研修の講師をお受けしておりますが、今回は曾根崎遊技業組合様にてコンプライアンス研修を実施しました。
- NPO法人と一般社団法人の比較
- 公益を目的とする場合にNPO法人と一般社団法人の設立が考えられます。両者の比較をしてみました。
- NPO法人と株式会社との比較
- NPO法人などの非営利法人と株式会社などの営利法人は何が違うのかの説明です。
- 民法大改正@ (連帯)保証
- 身近な民法が大改正されます。普段の生活に関係のありそうな部分を解説します。
- 民法大改正A 敷金について
- 民法大改正の中で、身近な敷金についての改正部分を解説します。
- 民法大改正B 約款
- 民法改正により定型約款に関する条文が新たに追加されました。
- サクラ店長のその後と危機管理
- あるチェーン店における、店長によるサクラ問題を基にして危機管理を考察します。
- 民法大改正C 時効
- 民法の改正により、時効制度は大きく変わりました。
- 民法大改正D 番外編/消費者契約法改正
- 民法改正とともに消費者契約法が一部改正されて、消費者保護が図られています。
- 『ガチャガチャ』をパチンコ店に設置しても問題ないのか?
- ガチャガチャをパチンコ店に設置することが法的に問題ないのかを検証しました。
- 保全対象施設との距離規制〜学校の目の前にパチンコ店ありましたよね〜
- 風俗営業の許可条件のひとつである、場所的条件の解説です。
- 『死後離婚』って何ですか?
- 最近世間で話題になっている『死後離婚』についての説明です。
- 親(身内)が認知症になった時の法的問題〜任意後見契約〜
- 親などの身内が認知症になった時に、法的にどのような問題が生じるのか解説します。
- 相続登記が義務化の方向へ
- 現在任意である相続登記を義務化する方向で検討が進められるようです。
- 配偶者居住権創設へ
- 相続に関する民法改正案が2018年通常国会に提出される模様です。
- 中小企業の労務問題〜とあるパチンコホールにて〜
- とあるパチンコホールを実例にして中小企業の労務問題を考えます。
- カラオケボックスに関する規制や届出について
- カラオケボックスにはどのような規制があるのかや必要な届出、風俗営業との関係を解説します。
- 大阪市において「特区民泊」認定の為の住民説明会義務化へ
- 大阪市が条例を改正して特区民泊認定要件の住民説明会の義務化を進めています。