民法大改正B 約款
【民法大改正B】約款
約款にはいくつかの意味がありますが、一般的に使う場合は「普通契約約款」の意味で使うことが多いのではないでしょうか。
銀行で口座を開設する時、クレジットカードをつくる時、携帯電話を契約する時、電気やガスを契約する時などなど、契約書の一部や又は別の書面に記載がある、ごく細かい文字で書かれた長文の文章、アレです。
「普通契約約款」とは、事業者などが不特定多数の利用者との契約を定型的に処理するためにあらかじめ作成した契約条項です。
例えば、大部分の人は意識していませんが、電車に乗る時に電鉄会社と運送契約を締結しています。
電鉄会社は乗客を安全に目的地まで運び、乗客はその対価として運賃を支払うという契約です。
各社は約款を作成し、車内に掲示したり、インターネットで公開したりしています。
電鉄会社がいちいち乗客の一人一人と契約することは現実的ではありませんので、約款をあらかじめ作成しておき、不特定多数の乗客との契約を画一的・定型的に処理しています。
パチンコ店では遊技約款を作成して、店内の見える場所に掲示している店舗もありますね。
サンドにお金を投入した時に店舗と遊技客との間で、遊技契約が締結されたと見なされ、約款に従って処理されます。
トラブル防止には一定の効果はあると思います。
しかし、この約款や規約と呼ばれるものの取り扱いが曖昧であったため、様々なトラブルがありました。
例えば、ネット通販で購入した商品を返品しようとしたが、規約に返品不可の記載があることを理由に断れたなどです。
もし、携帯電話を契約した時の約款で2年縛りであったものが、その後事業者が勝手に3年縛りにしたら、みなさんも納得できないのではないでしょうか?約款の一方的な変更が有効なのかどうかが争われる場面もありました。
今回の民法改正により、今まで普通契約約款と呼ばれていたものを、「定型約款」として明文化されました。
定型約款を契約の内容とする合意をした時やあらかじめ定型約款を契約内容とする旨を事業者が利用者に表示していた時は、メインの契約(先の例の電気やガスなどの契約)の合意をした者は、定型約款の個別の条項についての合意をしたものとみなされます。
つまり、メインの契約をすれば、「約款が細かい字で長々と書かれていたので読んでませんでした、知りません。」という言い訳は原則通用しません。
定型約款を事業者が一方的に変更する場合も基本的には同じような扱いです。
「事業者が勝手に変更したので、私には関係ありません。」とは原則言えません。
ただし、そのようにして合意や変更された約款であっても、信義に反し誠実ではなく、利用者の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意しなかったものと見なされます。
なので、例えば遊技約款に「天災があった場合は出玉を保証しません。加えて、既に獲得した遊技玉は没収、残金も返金しません。」と規定しても、それは信義に反し誠実ではなく、やり過ぎなので合意の効力はないでしょう。
このように明文化することでトラブルが減ることが期待されますが、実は必ずしもそうならないと私は考えています。
条文に、定型約款を合意したとはみなされない場合の要件が書かれてあります。
「定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして信義誠実の原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの」(は合意しなかったものとみなす)。
定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念とはどんなもの?信義誠実の原則に反してとはどの程度?など明文化されたと言っても明確ではありません。
あえて、条文の解釈に幅をもたせることによって、実情に合わせて運用ができるようにとの判断だと思いますが、これから先も一定数の争いはあるでしょう。
今回の民法改正の施行は3年以内ですが、約款を定めている事業者の方々はこれを機に自社の約款の見直しをお勧めします。
また、私のような利用者の側のみなさんは、定型約款が契約の一部とみなされる場面が今後多くなると思われますので、契約時には約款までキチンと目を通し理解した上で契約を締結する必要があると思います。
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