相続放棄についての説明

相続放棄は厳密です

【相続放棄は厳密です】
以前、A子さん(かなり年配の女性)から次のようなご相談がありました。

 

夫のB夫は3年程前に亡くなっています。子供は2人でc太郎、d子です。B夫は息子c太郎の借金の連帯保証人になっていましたが、A子さんは最近まで知りませんでした。

 

息子c太郎は訳あって音信不通の状態になりました。自分(A子)は無職で借金返済はできないので、娘d子とともに相続放棄したいとの内容でした。

 

 

まず、前回も記載しましたが、相続人は相続開始の時から、被相続人(亡くなった方)の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)。プラス財産だけではなく借金も相続されます。

 

 

(連帯)保証人の地位も相続されます。連帯保証人の責任は重いです。

 

主債務者(c太郎)が仮に借金をキチンと返済していても、仮に資産が豊富でも、貸主はA子さんに(弁済期にある)全額の返済を請求できます(平成17年4月1日以降の保証契約では保証人の責任がかなり軽減されました)。

 

A子さんはc太郎が音信不通である今の状況で、上記のような責任がかかってきても、返済不能である事を考慮しての相続放棄の意思でした。

 

 

相続放棄にはキチンとした要件があります。
@自己のために相続開始があったことを知った時(普通は被相続人が亡くなった時)から3カ月以内
A家庭裁判所に相続放棄申述書の提出(戸籍謄本などの添付書類も)

 

 

ここで、一般的に言われている「遺産の放棄」や「(単なる)放棄」との違いを説明すると、「相続放棄」はれっきとした法律用語であり、上記@Aの要件がありますし、相続放棄者は、始めから相続人でなかったものとみなされます(法律上そのように取扱われます)。仮に後から相続財産が出てきても、もはや相続人ではありませんので手に入りません。

 

 

それに対して、「遺産の放棄」や「(単なる)放棄」は、例えば、現金・不動産・証券・預貯金のうち不動産はいりませんという単なる意思表示の一般的用語であり、法律用語ではありません。ですので、相続人であることに変わりはありません。

 

 

A子さんの事例に戻りますと、A子さんは@の要件には当てはまりませんので原則相続放棄は不可です。

 

但し、例外があります。相続財産(借金も含む)が全くないと信じ、かつそのように信じたことに相当な理由があるとき」は相続放棄が認められる場合もあります。私はその旨を返答し一度弁護士さんへの相談を勧めましたが、弁護士さんの返答もやはり相続放棄不可でした。「相当な理由は認められないのではないか」との判断です。

 

 

私は、中学の時に離婚した父親が一昨年末に亡くなりました。念のため、相続放棄をしました。過去に多くの借金をしていたので、万が一まだ借金が残っていることを懸念しての判断です。

 

ちょっと知恵のある借金取りなら、3カ月以降に取り立てにくるのではないでしょうか。今は安心です(しかし父親がもし億万長者でも私はもう権利がありません)。

 

 

ですので、今回の結論は、相続財産がマイナスの可能性が高い方で相続放棄を検討される場合は期間に注意が必要です。
(相続して借金を返すのは自由です....。念のため。)

 

*本文中の事例はプライバシーの点から一部内容を変えております。

関連ページ

保護対象施設の調査は骨が折れます
保護対象施設の調査の記録です。
分割(合併)は慎重に!
パチンコホールの分割・合併についてのブログ記事
島に全台ベニヤで、島撤去!?
見通しを妨げる設備についてのブログ記事
マル優は本当にお得なの?
マル優取得のメリット・デメリットについてのブログ記事
御上(おかみ)には逆らえませんね
風適法運用についてのブログ記事
賞品は充分取り揃えて下さいね
賞品の取り揃えは重要事項です
これからは人手不足が経営リスク
今後労働人口の減少により、人手不足が深刻になります。パチンコホールにとっても経営リスクになります。
今更ですがパチンコ店は4号営業です
平成28年に風適法が改正され、パチンコ店は7号営業から4号営業に変わりました。
不便なホールがあります
営業マン時代に気付いた不便なホールの話
相続登記は面倒になる前に!
相続登記はいつまでが期限なのかについてのブログ記事
パチンコ店長が関与したとされるサクラ問題を考える
ある関西地元パチンコ店の店長がサクラを持ち掛けたとされる問題を説明
相続はよく''争族''などと言われています
相続において親族間での争いが増えております。
それは無承認変更です。
使用していない賞品(景品)カウンターを閉鎖している場合は、無承認変更にあたるかもしれません。
保護対象施設の調査は骨が折れますA
開店予定地の近隣に保護対象施設があると、風俗営業の許可は下りません。実体験を元にした解説です。
共有名義の不動産について
例えば、夫婦などで共有名義の不動産については注意が必要です。
研修の講師してきました(曽根崎遊技業組合様にて)
当事務所ではセミナーや研修の講師をお受けしておりますが、今回は曾根崎遊技業組合様にてコンプライアンス研修を実施しました。
NPO法人と一般社団法人の比較
公益を目的とする場合にNPO法人と一般社団法人の設立が考えられます。両者の比較をしてみました。
NPO法人と株式会社との比較
NPO法人などの非営利法人と株式会社などの営利法人は何が違うのかの説明です。
民法大改正@ (連帯)保証
身近な民法が大改正されます。普段の生活に関係のありそうな部分を解説します。
民法大改正A 敷金について
民法大改正の中で、身近な敷金についての改正部分を解説します。
民法大改正B 約款
民法改正により定型約款に関する条文が新たに追加されました。
サクラ店長のその後と危機管理
あるチェーン店における、店長によるサクラ問題を基にして危機管理を考察します。
民法大改正C 時効
民法の改正により、時効制度は大きく変わりました。
民法大改正D 番外編/消費者契約法改正
民法改正とともに消費者契約法が一部改正されて、消費者保護が図られています。
『ガチャガチャ』をパチンコ店に設置しても問題ないのか?
ガチャガチャをパチンコ店に設置することが法的に問題ないのかを検証しました。
保全対象施設との距離規制〜学校の目の前にパチンコ店ありましたよね〜
風俗営業の許可条件のひとつである、場所的条件の解説です。
『死後離婚』って何ですか?
最近世間で話題になっている『死後離婚』についての説明です。
親(身内)が認知症になった時の法的問題〜任意後見契約〜
親などの身内が認知症になった時に、法的にどのような問題が生じるのか解説します。
相続登記が義務化の方向へ
現在任意である相続登記を義務化する方向で検討が進められるようです。
配偶者居住権創設へ
相続に関する民法改正案が2018年通常国会に提出される模様です。
中小企業の労務問題〜とあるパチンコホールにて〜
とあるパチンコホールを実例にして中小企業の労務問題を考えます。
民泊の種類別比較
合法民泊の中心である住宅宿泊事業法による民泊、特区民泊、旅館業法による民泊を比較してみました。
カラオケボックスに関する規制や届出について
カラオケボックスにはどのような規制があるのかや必要な届出、風俗営業との関係を解説します。
大阪市において「特区民泊」認定の為の住民説明会義務化へ
大阪市が条例を改正して特区民泊認定要件の住民説明会の義務化を進めています。

トップ 業務内容 行政書士紹介 事務所概要 Q&A ブログ お問い合わせ