NPO法人と一般社団法人の比較
【NPO法人と一般社団法人の比較】
先日、NPO法人の設立についてのご相談がありましたので、よく似た法人形態である一般社団法人との比較をご説明します。
まず、NPO法人制度ができるまでの経緯を少しご説明します。
1995年に発生した阪神大震災をきっかけに、ボランティアなどの公益活動を行う法人の必要性が意識されるようになった。
(それまでのボランティア活動は個人を中心に行われていたが、個人だと活動規模が限られていた)
↓
当時、公益法人を設立しようと思えば、民法の『公益社団法人』『公益財団法人』しかなかった。しかし、設立には主務官庁の許可が必要で、簡単には設立できなかった。
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民法を改正し上記2つの法人を簡単に設立できるように目指したが、許可権限を失う官庁が反対して改正が進まなかった。
(上記2つの法人は役人の重要な天下り先。許可権限のある役人は、設立しようとする法人に対して、許可する見返りに自分を雇うように迫った。そして、役人を辞めた後に法人に就職し、そこで多額の報酬を得た。)
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民法改正が進まないので、新たな法律を作った。それが1998年12月施行の『特定非営利活動促進法(通称:NPO法)』。
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その後、民法が改正され2008年12月施行の『一般社団法人及び一般財団法人に関する法律』が新設され、NPO法人とよく似た「一般社団法人」が設立できるようになった。
NPO法人 | 一般社団法人 | 備考 | |
---|---|---|---|
活動内容 | 公益の増進に寄与する活動に限られる | 特に制限なし | 自由度は一般社団法人の方が高い |
設立にかかる期間 | 約5〜6ヵ月 | 約1ヵ月 | NPO法人設立には時間がかかる |
構成員 | 10人以上 | 2人以上 | 「構成員」とは株式会社で言うと「株主」。但し、出資は不要。言い換えると、賛同者。 |
役員 | 理事3名以上、監事1名以上 | 理事1名以上 | 「理事」「監事」は株式会社で言うと「取締役」「監査役」。 |
役員の親族規制 | 有り | 無し | NPO法人の場合は、役員総数のうち3親等内の親族が3分の1を超えて含まれてはいけない。 |
書類作成の難易度 | 高い | 高くない | |
所轄庁への報告義務 | 毎年度、事業報告書類の提出が必要 | 不要 | |
設立に必要な経費 | 0円 | 約11万円 | 専門家の報酬は別です(念のため) |
法人税 | 税法で定めれた収益事業を行っていなければ免除有り | 原則免除無し | NPO法人の場合、会費や寄付金のみで運営するなら法人税は免除 |
法人住民税 | 税法で定めれた収益事業を行っていなければ免除有り | 免除無し | NPO法人の場合、会費や寄付金のみで運営するなら法人住民税は免除 |
変更登記の印紙代 | 0円 | 1万円〜 | 専門家の報酬は別です(念のため) |
知名度 | 高い(1998年〜) | 低い(2008年〜) |
上の表が「NPO法人」と「一般社団法人」を簡単に比較したものです。
黄色のセルがメリットだと思われる部分です。
世間でNPO法人がたくさん設立されている理由はいくつかあると思います。
まず一つ目は知名度が高い事。
上記の経緯でもありましたが、NPO法人の方が歴史が長く、「ボランティア活動=NPO法人」というイメージが定着してます。
対して、一般社団法人は世間的には存在すら知らない人が多く、法人設立の選択肢に上がっていないと思われます。
決して「ボランティア活動=NPO法人」とは限りません。
二つ目は経費や税金面で優遇されている事。
金額的には個人の価値観によりますが、メリットではあると思います。
三つ目は専門家(司法書士や行政書士)がNPO法人の方を勧めていると思われる事。
ずばり、NPO法人を設立した方が専門家は儲かります。
設立手続きがややこしので手数料が高い上に、毎年度に事業報告書を作成しなければならないので、そこでも儲かります。
以上の3つの理由などにより、多少設立に時間がかかって手続き的に面倒でもNPO法人を選択する方が多いのではないでしょうか。
では、どちらを選んだ方が良いのか?
結論としては、何を優先するかだと思います。
知名度や経費面を優先するならNPO法人。
但し、設立まで時間がかかる、賛同者が10名以上必要、役員を親族で固められない、手続きが面倒などがデメリット。
手軽さを優先するなら一般社団法人ですかね。
但し、知名度が低い、経費や税金面で優遇されていないのがデメリット。
以上がよく似た法人である両者の比較でした。
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